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コラム:『阪急ブランド』発祥の地としての歴史を持つ「阪急宝塚線」沿線

東豊中地区の住宅街

大阪都心から10km圏に位置する豊中エリア。大阪市に隣接という便利な立地のため、現在では近郊住宅都市として成長を遂げています。緑の豊かさや文教都市としての落ち着いた表情を持つ豊中エリアは、優れた住環境が魅力の人気の住宅街として注目を集め続けています。

豊中エリアは関西圏での「住みたい街ランキング」の常連のひとつであり、例えば『2009年度 マンション購入意向者に聞く、住んでみたい街アンケート(関西圏)[1]』では14位を獲得、根強い人気を誇っています。

そんな豊中エリアを中心とした阪急宝塚線沿線ですが、最も早くから阪急グループによって開発が進められた街であり、現在の『阪急ブランド』の発祥とも言うべき歴史を持っています。

阪急宝塚線

豊中エリアが大阪市近郊の住宅都市としての歴史を歩みだしたのは、1910(明治43)年の「箕面有馬電気軌道」開業を契機としています。この鉄道は現在の阪急宝塚線、さらには阪急グループの起源となる路線です。

この鉄道の経営に関わったのが、後の阪急グループの創始者となる小林一三です。彼はイギリス発の都市開発思想「田園都市構想」をヒントに、鉄道建設の際に利用客の増加を狙って観光施設や商業施設の建設、さらには宅地開発を合わせて計画し、沿線に街を作り上げることを目指しました。現在では多くの鉄道会社や欧米の都市計画にも取り入れられているこの手法ですが、当時としては世界的に見ても稀なもので、小林一三の先見性の高さを示したものと言えます。

箕面有馬電気軌道はその手法の原点となるものであり、終点の宝塚には「宝塚新温泉(後の宝塚ファミリーランド)」や「宝塚唱歌隊(現在の宝塚歌劇団)」が設置されるなど、沿線にはさまざまな集客施設が誕生しました。

豊中エリアにも現在の玉井町地区に「豊中グラウンド」が建設されました。ここは当時としては珍しい野球専用の球場として開設され、1915(大正4)年には現在の『夏の甲子園』の前身である「第一回 全国中等学校優勝野球大会」の誘致に成功、そのため豊中市は「高校野球発祥の地」として知られるようになります。

岡町駅周辺の住宅街

また沿線の各地では宅地開発も合わせて進行しました。箕面有馬電気軌道開業と同時に、現在の池田駅南西側に位置する「池田室町」では中産階級向けの新興住宅地が販売され、大いに人気を博しました。この住宅地経営は鉄道会社としては初めてのものであり、鉄道建設とセットにした住宅開発の手法は後に東急電鉄や西武鉄道など、他の鉄道会社にも波及していきます。

豊中エリアでも箕面有馬電気軌道の開通とともに、電鉄資本など様々な住宅地開発が進められ、徐々に近郊住宅地としての表情を見せるようになっていきます。

明治末期から大正時代にかけて「豊中住宅地」や「岡町住宅経営地(現在の岡町駅西口周辺)」「豊中北屋敷(現在の本町3丁目付近)」「豊中新屋敷(現在の末広町)」など、次々に住宅地の建設が進みました。これらの住宅街は、郊外の計画的な住宅地としては東京の「田園調布」や「新町住宅地(世田谷区桜新町駅周辺)」などとともに、日本では最古の部類に入るものです。

桜塚地区の住宅街

さらに昭和初期には、現在の東豊中地区や、「豊中第一土地区画整理」によって開発された桜塚地区でも住宅の建設が進み、郊外らしいゆったりとした敷地を持つ邸宅街が形成されました。

箕面有馬電気軌道はその後阪急電鉄へと成長し、豊中をはじめとした宝塚線沿線での開発手法を神戸線・今津線沿線などにも応用。俗に「阪急文化圏」「阪急平野」と呼ばれる独特な沿線文化圏を作り上げていきました。文化人としても名高い小林一三は独特な審美眼を持っていたと伝えられていますが、沿線開発によって生まれた優れた街並みの中にもその感性が発露しているのかも知れません。

東豊中地区の住宅街

豊中エリアの高級住宅地と言われるエリアの多くは、鉄道開通から戦前までに整備された伝統ある住宅地という点で共通しています。上記の伝統的な住宅街の多くは、現在も落ち着いた雰囲気が印象的な閑静な住宅街として、良好な環境を保ち続けています。

豊中駅や岡町駅・曽根駅周辺など先行して開発が進んだ場所では、豊中エリアの成長とともに商業施設をはじめ様々な都市機能が充実、住宅だけではない便利な街並みが広がっています。しかし賑やかな場所から一歩離れると、現在も閑静な住宅街が残されています。特に豊中駅の西側に広がる玉井町・末広町一帯には趣豊かな邸宅が立ち並んでおり、その美しさから「とよなか百景」にも選ばれています。

また昭和前期に開発された桜塚地区や東豊中・上野地区は、自動車にも対応した広々とした街区構成となっており、より高級住宅街らしい趣を感じられます。特に東豊中地区は「風致地区」に指定されており、厳しい建築規制の下、良好な住環境は今も健在。北摂を代表する高級住宅街として高い人気を集めています。

玉井町地区の住宅街

阪急沿線らしい高級感ある住環境が魅力の豊中エリア。『阪急ブランド』発祥の地として、今後もより成熟した環境が形成されるものと思われます。

[1]出展:第11回 住んでみたい街アンケート(首都圏/関西圏)2009年
http://www.major7.net/contents/trendlabo/research/vol011/